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「ところで……、この石、どこで手に入れました……?」
痩せた男の目を伺うように、クリストフは質問した。
「そうだなあ……、言ってもいいがタダで話す訳にはいかないね……」
にやりと嫌らしい笑みを浮かべて、男は右手の人差し指と親指を摺り合わせた。
面倒臭そうにクリストフは財布から札を取り出すと男に握らせる。
「毎度あり! この魔光石ですがね、あっしもある人から譲り受けたんですよ。元々はサンタシのとある地で製造されたものらしいんですが、“マルサスの危機”でサンタシの兵とともにゴーディア国内に持ち込まれた中の一つだという話でさ」
男の話を目を細めながら聞いていたクリストフは、声を落として訊ねた。
「サンタシのとある地とはどこです?」
男はちっちと舌打ちをすると、
「こっからは固有名詞が入ってきやすから、追加料金をいただかないと……」
不愉快そうに眉根を顰めつつも、クリストフは仕方なく再び財布から取り出した札を男に手渡す。
「毎度! ある地ってのは、嘗ての砲弾生産の中心地ミラクストーでさ」
朱音は聞き覚えのある地名にあっと小さく声を上げた。
朱音の記憶が正しければ、ルイとロランの生まれ故郷の筈だった。
「なるほど……。最後に一つ、あなたがこの魔光石を譲り受けたある人とは誰ですか?」
口の軽い男だったが、急に口を一文字に結ぶと、男は口を開こうとはしなくなった。
クリストフは一つ溜息をつくと、
「さて、お待たせしてすみませんでしたね。アカネさん、行きましょうか」
と、再び歩みを再開させた。
しかし、それは朱音にとっては有難いことで、それは街外れの宿屋に置いてきたある人の様子が調度気にかかり始めていたからである。
「ちょっ、旦那!」
まだ何か用かとでもいうように、クリストフは歩みを止めることなく痩せ身の男をちらりと横目で見た。
「見たところ、旦那達は旅の途中だろ? どうだ、あっしを案内役として雇うなんてことは。安くしとくよ」
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