第2章 ゴーディア編

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  そして、洞窟の中では数人の兵士が倒れていた。 誰も彼も、何かに切りつけられたように血を流している。 (ひどい……!)   彼らが既に息をしていないことだけは確かだった。   朱音は、懸命に目だけを動かして、自分の知る人物の姿を探した。   ロラン、フェルデン……。 この中に彼らの姿がないことを祈るが、その希望はすぐ様打ち消された。 「ううっ……」   洞窟の隅でうごめく小さな影。目を凝らしてみると、それはどこかで見たローブだった。 (ロラン……!)   恐ろしいことに、ロランのローブから血が染み出していた。 「なかなかしぶとい様だなロラン、この裏切り者の犬めが」   アザエルが冷酷な笑みを零す。   朱音はぞっとした。 「……ア……カネ……をどうするつもりだ……」   ロランは息も切れぎれにそれでも怯むことなくアザエルを睨みつける。 「我が国王を裏切った者に話すことは何もない。せめて一思いに死なせてやろう」   アザエルが無慈悲にも空いた左手をロランに振り上げようとした。 (やめてーーーーーー!!!) 「やめろ!」   アザエルが一体何をしようとしていたのかはわからないが、洞窟の入り口からの鋭い制止の声にピタリとその手を止めた。   アザエルがじっと暗闇の中その声の主を見据えている。   暗闇の中、月明かりに映し出されたその姿は、紛れもなくあのフェルデンであった。   幸い、この場を離れていたのか彼には傷はないようだ。白く美しい軍服には血液の染みはついていなかった。 「フェルデン・フォン・ヴォルティーユか」   アザエルはフェルデンを見知っているようだ。
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