第2章 ゴーディア編

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「やめておけ。お前の剣の腕は噂で聞き及んでいる。今は無理だが、いずれ魔術抜きで剣を交えたいところだ。どうしても今だと言うのならば、わたしは惜しくも魔力でもってしてお前を殺してしまうだろう」   フェルデンは少しの迷いもなく剣を納めようとはしない。 「アカネをみすみす連れて行かせる訳にはいかない。それに貴様にそう簡単に殺られる訳にもな!」   勢いよくフェルデンが剣をアザエルに突き刺した。   しかし、それは風のようにさっと避けられてしまう。 「愚かな」   アザエルが朱音を抱えていない空いた左手をフェルデンに振り下ろした。 一瞬にしてアザエルの手からどす黒い尖った釘のようなものが勢い良く無数に放たれた。 「やめてーーーー!!」 「うっ……」 朱音の声がセレネの森に響き渡った。   何がどうなったのか、朱音は自分の身体が動くことに気付き、慌ててアザエルの肩の上で無茶苦茶に暴れ回った。 流石のアザエルも不意の事態に対応仕切れず、思わず手の力を緩めてしまった。   その隙を狙って、朱音は勢いよくアザエルの肩から飛び降りた。 足元で呻くフェルデンの元に素早く駆けつける。 「フェルデン!」   攻撃の瞬間にうまく身体を僅かに逸らしたのか、急所は外れているようだ。   でも、左肩には深い傷を負っていた。 白い服にはどす黒い血が滲み出し、腕を伝って幾筋もの血液が流れ出していた。 「困りましたね、魔力を持たない筈のあなたが私の術を破ってしまうとは・・・」  アザエルがフェルデンと朱音を見下ろす。 「その男から離れてください。あなたまで傷つけてしまいます」   アザエルは再び手をフェルデンに向けようとしている。 「ダメー! 殺さないでっ」 朱音は地面に肩膝をついて痛みに耐えるフェルデンの長身の身体を必死に庇おうとする。
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