第2章 ゴーディア編

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  アザエルは、テーブルに載ったままの冷めた朝食にちらりと目をやるが、そのことについて何も言おうとはしなかった。 「おはようございます。今日のご予定を申し上げに参りました。本日、王都マルサスで復活祭が催されることになっております」   窓の出っ張りに肘をついたまま、朱音は何も聞こえてないような素振りでじっと窓の外を眺め続けている。 「それに即して、我城でクロウ殿下の復活の儀式が執り行なわれることになりました」   さらりと何事もないように話す淡々としたアザエルの言葉に、朱音は驚き、勢いよく振り返る。 「儀式!? そんなの聞いてない!」   朱音が乱暴に立ち上がったせいで、腰掛けていた椅子は大きな音を立てて床に倒れた。 「元老院の権限により急遽決まったことです。王の不在に国民や他国が感付き始めました。一刻も早い、クロウ殿下の即位が望まれます」   朱音は、怒りに打ち震えた。 「儀式って一体何をするの……?」   儀式と耳にすると、サンタシでフェルデンやヴィクトル王に言われた”贄”という嫌な言葉が蘇る。 「あなたは何もしなくても構いません。全ては祭司に任せておけばよいのです」   何もしない儀式など、あるはずもない。 朱音はその言葉の真意を探ろうと躍起になった。 「何もしないって、どういうこと……?」   ツカツカと早足でアザエルに近付いていくと、アザエルの腕の裾をぐいと引っ張って睨み上げた。 「今の人間の肉体から魂を抜き出し、元の身体に戻すだけのことです」   朱音はさっと血の気が引くのがわかった。 (魂を抜き出す……? じゃあわたしの身体は一体どうなるの……?)   カタカタと震え出す肩。朱音は恐ろしさで震えを止めることはできなかった。 「た……魂を抜き出すって、どうやって……?」  
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