第2章 ゴーディア編

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「フェル、そう自分を責めるな。お前の指揮官としての働きはこの国の誰もが認めている。それに、お前があの場に初めからいたにしても、いくら剣の腕の立つお前でもあの男の魔術を前に対抗できたのかもわかるまい。寧ろ、そうであればお前の命はもうここにはなかったやもしれぬ」   ヴィクトルの言うことは正しかった。 アザエルの魔力が強大で、結界術を得意とする有能なあのロランでさえ怪我を負ったのだ。 ただの人間であるフェルデンに剣一本で互角に渡り合える筈はない。 「それよりも、お前はまずその怪我を治すことに専念しろ。お前には、一刻も早く復活し、重要な任に就いて貰う予定でいるのだ」   フェルデンの額には、うっすらと汗が浮き出ている。 傷の痛みは尚酷いらしい。 「重要な任……?」   ヴィクトルはフィルマンに目配せして部屋を退室するよう合図し、フィルマンがいなくなるのを確認した後、声を落として驚くべき事実を告げた。 「ゴーディアに放っておいた密偵からの情報でまだ確信はないのだが、ルシファー王が死去した可能性がある。それをゴーディアがどうも隠し立てしているようだと……。」 「そ、それは本当ですか!?」   フェルデンは兄王の腕を掴むと、強く揺さぶった。 「これはあくまで推測の域だ。だが、各国の王達が異変を感じ始めているのも事実」   ヴィクトルは難しい面持ちで頷く。 「実はあの儀式の夜、わたしも何か胸騒ぎを感じてな、お前がアカネを連れて出た一刻半程後に、ディートハルト達に鏡の洞窟へと向かわせたのだ」   何か言いたそうなフェルデンの顔を見て、ヴィクトルは腕を強く掴む弟の手首にそっと手を置き言った。 「ディートハルト達が着いたときには、既にお前が洞窟脇に血を流して倒れていて、洞窟内も悲惨だったと……。生きていたのはお前とロランのみ。ディートハルトは部下にお前達をすぐに城へと運ばせて、自らはアザエルの気配を追ったが、森を抜けてしばらくいったところで見失ったと報告を受けた」
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