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彼らは魔王ルシファー選りすぐりの医療魔術精鋭部隊であった。
しばらくは苦しそうに呼吸を繰り繰り返していた主だったが、しばらくすると、少しずつ落ち着きを取り戻し、穏やかな表情ですっと眠りに落ちていった。
そんな様子を見て傍を離れても大丈夫と判断したアザエルは、主を残したままそっと部屋を後にしたのだった。
“アカネ……”
どこかでフェルデンにそう呼ばれた気がして、朱音は目を開けた。
あのひどい喉の痛みや気だるさよりも遥かに楽になった身体は、それでもまだ全てを拭いきれていないようだった。
「んん、だるい……」
のっそりと起き上がると、まだはっきりしない頭でぼうっと部屋を見渡す。
見覚えのある天蓋つきのベッド。
この部屋は朱音が儀式の前に過ごしていた部屋だった。
(いつの間にこの部屋に戻されたんだろう……)
朱音は、儀式の恐ろしい記憶を蘇らせた。
そうだ、確かにあの時、ハデスの短剣が朱音の胸を貫いた瞬間に走った凄まじい痛みは、今思い出しただけでも身震いする。
できることならもう二度と経験したくない痛みである。
慌てて朱音は自分の胸に手を当ててハデスの剣の存在やそれが残した傷跡を確かめようとした。
(!!)
見慣れぬ黒く薄い被服の下は、普段触れなれている筈の朱音の身体とは明らかに違っていた。
驚きのあまり息をするのも忘れて、朱音は今度はまじまじと両の腕や手の甲、平を見る。
生粋の日本人の筈の朱音の手は、本来ならば黄みがかった色をしているはずなのだが、妙に白く、染み一つ見当たらない。
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