第2章 ゴーディア編

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「フェルデン殿下、無理をさなっているんじゃ……」   小柄な騎士、ユリウスが心配そうに小声で見上げてくる。 「心配するな。なんともない」   フェルデンの肩の傷はまだ完全には塞がってはいなかった。 そして、微熱が尚も続いていることを、ユリウスは知っていた。   騎士には珍しい小柄なこの青年は、十七歳という若さでサンタシ国の騎士団の指揮官という任につき、その二年間で数々の功績を残してきたことに尊敬の眼差しを向ける者の中の一人であった。   思い返してみても、この旅は過酷なもののなにものでもなかった。 傷の塞がりきらないフェルデンに、ゴーディアへの遣いを命じるヴィクトル王の考えに、ユリウス自身納得できないでいた。   しかし、国王の命令に背くことは誰であろうとできない。 そのせいで、こうして高貴な地位のフェルデンが地味な旅装束を身に纏い、大切な愛馬も白亜城に置いて極秘任務にあたっているのだ。   王都の西にある貿易の盛んな町ディアーゼの港まで来ると、サンタシの商船に見せかけて改装した戦闘用の船に乗り込み、二人は密やかにゴーディアの地へとやって来ていた。 「フェルデン様、どうかご無事で……!」 商船の船長を演じる太った中年の男は、甲板の上から声を掛けた。   この男、戦闘船リーベル号の船長アルノは今回のフェルデンの極秘任務を知らされている数少ない人物である。 「ああ、世話になったな」   フェルデンはアルノを見上げて右手をあげて合図した。 「いいですか、我々の船はしばらくは“商売の為に”この港に停泊します”」 アルノは語尾を強調してそう言うと、忙しそうに甲板の奥へと姿を消していった。
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