第2章 ゴーディア編

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  ここからはまた馬を使って旅を続けなければならない。 ゴーディアの王都、マルサスは四方を山脈に囲まれた地にあり、山を越える必要がある。   ここの地形に詳しくはないフェルデンとユリウスが無事に王都に辿り着く為には、人々が馬車や徒歩で行き来してできた山道をひたすら突き進むしかない。 山の中を突き進むには、二人には土地勘が無さすぎた。 ユリウスは、ふと以前のことを回想していた。 「どうやら整理ができたようですな」   低いしわがれた声で、額から下唇に渡って、深く古い剣傷を残し目を細めて眺めた。 「ディートハルト、ヴィクトル陛下から話は伺った。またもや命を救って貰ったと……」   フェルデンはかつての師の目を落ち着いた面持ちで見つめた。 「貴方を鏡の洞窟の前で見つけたときにはこうも思いましたぞ。なんというザマだ! 図体ばかり大きくなって、中身はてんで生っ白い! まだ騎士団の指令官の任を譲るには早すぎたか! と」 手を腰にやり、大声で笑い出したディートハルトは、長身であるフェルデンに並んでもまだ高く、警備隊の長の制服とマントに隠されてはいても、年を重ねた筈の身体に屈強な筋肉は健在だった。 照れくさそうに苦笑するフェルデンの目には、今や迷いの色は見えなかった。 「おれの弱さは今に始まったことじゃないと気付いたんだ。ならばこれからもっと強くなればいい、と。失ったものは奪い返せばいい、と」   フェルデンの強い言葉に、ディートハルトはふっと口を綻ばせ、嘗ての弟子の肩にぽんと大きな手を置いた。 「まだ傷は癒えていないようだが、行くのですかな?」   フェルデンはこくりと頷いた。 「これ以上は引き延ばすことはできない。今直ぐにでも発たなければ」   連れ去られた朱音の行く先は贄という悲惨なものだった。 これ以上の長居は朱音の命をも脅かす。
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