第2章 ゴーディア編

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【15話 引き裂かれた心】  魔城は日が落ちるとますます不気味に暗くなり、明かりをつけていても尚薄暗い。   白亜城とはまるで対極にあるような城だな、とユリウスは思った。 「しかし、兄上が放っている密偵とやらの情報で、おれ達は随分助けられているな」   フェルデンは魔城の内部を記してある手書きの地図を取り出すと、蝋燭の火で照らした。 「どうやって調べたのかはわからないけれど、大まかな部屋の場所はこれでなんとかわかりますよね」   ユリウスがにこりと白い歯を見せて笑った。 「フェルデン殿下がこうまでして取り戻したい程のお嬢さんだ、セレネの森では薄暗くてよく見えなかったけれど、きっと可愛い子なんでしょうね」   にやにやと肘でフェルデンは部下に脇腹をつつかれると、 「ユリ!」 と頭を軽く叩いた。 「って! 何焦ってるんですか? 大丈夫ですってば。おれの好みはボッキュッボンの大人の女なんですから」   ユリウスは悪戯っぽい目をフェルデンに向けると、また地図に視線を戻した。 「おれが思うにですね、アカネさんが囚われているとしたら……この地下牢か、こっちの離棟じゃないでしょうか」   フェルデンは、揺れる蝋燭の炎をゆっくりと地図から遠ざけた。 「同感だ。ほんとにお前とは昔っからそういうところは気が合うな」   城内を調べ歩くにはもう左程時間はない。 地下牢と離棟の当てが外れたら、きっともう朱音を見つけ出すことは困難になるだろう。 「今は時間が惜しい。お前は離棟を、俺は地下牢を探すことにしよう。そして、無事にアカネを見つけたら、お前がアカネをサンタシまで連れて逃げてくれ」 小柄な部下は、こくりと頷いた。   フェルデンにはまだ、アザエルの身柄を預かり、サンタシへと連れ帰るという重要な任が残っていたのだ。   二人の計画は、パーティーから大勢の客人が出ていく瞬間を狙って、予め用意しておいた変装で人ごみに紛れて逃亡するというものだった。
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