01 なこ

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私があいつを殺したのは、最初の生理がきてすぐ のことだ。 ママが連れこんだカラスみたいな顔の男。 最初に言い出したのは姉の方だったけれど、 最後にとどめをさしたのは私だった。 「股が痛いよお、 ヒリヒリする、 しみないくらいぬれてくれればいいのにさ、 こうやって下っ腹押すとせいしが早く出てくる気 がするよね、 あいつ殺してしまおうか」 鏡で股をてらしながら姉の実子(みこ)が言った。 「そんなことしたら、ママが悲しむよ」 「そんなら菜子(なこ)があたしの番のときも股 ひらいてあんあ ん言ってよ」 「… うん」 私は言った。 「いいの?」 「うん」 「これからずっとだよ」 「うん」 「きもちよかったの?」 「ちがう!」 「じゃあ一緒に殺しちゃお」 実子は言った。 「ほんとにやるの?」 私は言う。 「やるよ、 穴を掘って、 うーんと深く、 そこにあいつを落として埋めるの」 「うまくいくかなあ?」 「うまくやるの!」実子の声は力のかたまりみたい に強かった。 だけど、その強さは背伸びする足で揺れている。 目の奥には壊れそうな光。 見ちゃいけない気持ちになるくらい哀れで小さな 光の粒。 実子と私は一卵性の双子だった。 実子は体が弱い。 その体で、私が地獄だと感じる一連に堪えてい た。 まだ毛もうまく生えていない股の間に、指だの長 細いとされるあらゆるものを押し入れられ、引っ かき回されて、最後には一番汚いもので蓋をされ る。 そして、まともに形成されてない穴の中を、なにも知らない何万個もの純粋がすいすいと希望めが けて泳ぎまわる。 そういう相手を実子と日替わりでしていた。 嫌がると苦痛が長引くので、私はできるだけ聞き 分けよく従い、済んだ後は急いで股に送り込まれたものを押し 出して、出しきれない嫌悪を無理やり口から嘔吐 する。 黄色く濁った胃液さえ、股から入ったものみたい に感じられて、私は血がにじむまで何度もくりか えし吐いた。
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