01 なこ

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「ばっかみたい、   あんたに何がわかるの?、     苦しいってしってる?   死んだこともないのに死ぬことが手に取るようにわかって、 怖くて怖くてどうにかなりそうなんだよ、   あいつに犯されてる方がまだマシ、   眠るときいつも、このまま死ぬかもって思う、   あれもしてないとかこれもしてないとか、やりたいことばっかり溢れてくる、   なのに体は重くて痛くて、目はどんどんつぶされて、   息もうまく吸えない、     そういう時間が今までもこの先もずっと、あたしの側にはあるのに、       わかんないなんてずるい   あたしだけなんて酷すぎる、   双子のくせにいい」     実子はヒスを撒き散らしながら、細く尖った手で毛布をしわくちゃにした。   「ごめんね、   ごめんねごめんねごめんね」     私は言う。     投げても投げても崩れ落ちていくちっぽけをいくつも抱えながら。   実子のトゲがもっともっと私に刺さって丸くなればいいと祈った。  「あやまるとか、   そんなの、   意味ない、    心だって   ちっともつまってなんかないじゃないかあ」     実子が放つヒスにまじったその言葉は、私のあるがままを語っていたのかもしれない。    そう思った。   悲しみを真似てあやまる私の汚れを、実子のきらきらした綺麗な目が教えてくれている。     私が実子を愛おしく思う気持ちや、気の毒に思う気持ちは、私の知らない痛みや傷でめちゃくちゃに汚れていた。   「私ちゃんと殺すからね、   あいつのこと」     私は何もかもを輝かせて泣く実子に言った。
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