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『ただいまwwwww』
秋が深まった時期、私は確かに聞きました
めくれたフードから覗く無造作な黒い髪、ヘラヘラとした笑い方に創られたように中間を行く顔
そして、聞き間違えるはずもないたった一人の肉親の声
気付いた時には数メートル先を走り、飛びつきました
だって数か月ぶりとはいえ一時期は絶縁かと思っていたんです。感情を表に出すのが苦手だと自負してますがしょうがないです
そのままたった一人の肉親の体に抱き付ーーー
ドンッ
ーーーけずに床に顔を打ちました。痛いです
痛いと思いながら目を開ければそこはいつもの自分の部屋
学園の寮とは思えない程に拡張された部屋とこの家
「なんで今日になって夢を見たんでしょう……」
久しぶりに見ましたよあの夢
現実はかくも痛いものなのに。ベッドから転げ落ちるなんていつぶりでしょう。少なくとも物心ついてからは一度もないです
思い切り打った鼻を押さえつつ、パジャマから制服に着替えます。朝のシャワーは髪が傷むと漫画で読んだのでそれ以来浴びてません
「おはようございますアリス様」
「おはようございます」
食堂へ行くと、丁度メイド長であるソラさんが朝食を運んでいるところでした
長い黒髪にメイド服。毎日見ているのになぜか一年ぶりぐらいな気がします。なぜでしょう。それに間に何かあったような……
電波を受信してました
「今日は和風ですね」
「はい、たまには良いかと思いまして」
出来たばかりで湯気の立つご飯と鮭、さらにお味噌汁。朝なのに食欲を掻き立てられます
しかし、ほかの皆さんが来ていないのに私だけ食べることなんてできません。近年個食や孤食が目立つそうですが、やはりご飯は家族でそろって食べてこそです
「はぁ、モノローグと行動が一致してませんよアリスさん」
「あ、セラフィムおはようございますもぐもぐ」
今日も今日とて金髪美人です。たゆんたゆんです
「あの……そんなに睨まれると食べづらいんですけど」
おっと、無意識に睨んでました。別にうらやましいからではないです。えぇ、決して
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