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――二年目の結婚記念日だ。
その頃は、まだお互いに不安定な収入の中、質素だがそれなりに幸せだったと思う。
「高価なレストランには連れて行ってあげられないけど、今日は俺が作るよ」
そう言って作ったのが、カレーライスだった。
料理などほとんどしたことはなかったが、市販のルーの箱の裏に書かれたレシピを見て、なんとか形にした。
少し舐めて掛かった所もあった。
記憶の中では、一番簡単な料理だったからだ。
もっとも今思えばそれは、カレーを混ぜる係だった、小学校の調理実習での記憶だろう。
カレー作りが難しいものだという記憶など、残るはずもない。
出来上がったカレーライスは何とも無様で、人参にはもれなく皮が付いて来たし、ジャガイモは二口サイズだった。
妻はそれを、嫌な顔一つせず、嬉しそうに平らげてくれた。
それが俺には、この上なく申し訳なかったのだが。
落ち込む俺に、妻が言ったのだ。
「皮が付いてた方が自然のままって感じで良いよ。……美味しい、このカレーライス」
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