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幼少期にまで遡ったのか、きゃっきゃとはしゃぐ妻を何とかなだめ、頂上まで辿り着く。
もっとも、ここが山頂では無いことに気付き、愕然としたのだが。
「おい、まだ登るのか?」
そろそろ妻の我が儘に嫌気がさし、わざと苛ついた素振りをしてみせた。
「いえ、ここですよ、ほら」
妻の目線につられ左側を見ると、そこにはレンガ造りの建物があった。
もともと鮮やかな赤茶色だったのだろうが、ツタが絡み、所々欠けていたり、薄汚れていたりする。
申し訳程度にちょこんと出っ張った煙突からは、煙が立ちこめていた。
「行きましょ」
「ああ」
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