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入り口の扉は木製で、長い間風雨に晒されていたせいだろうか、かなり腐ってぼろぼろになっている。
扉には文字が書いてあるようだが、かすれていて読み取れない。
金色が剥げ、黒くなっている取っ手を、妻が回す。
カランコロンと、内側に取り付けられていたドアベルがなり、それと同時に、腹を空かせる良い匂いが漂う。
どうやらレストランのような場所らしい。
建物の中に、丸机と丸椅子が、いくつか並べられているのが分かった。
「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
そう言って現れたのは、若いウエイターだ。
白いワイシャツに黒のベストを重ね、首元に蝶ネクタイを結んでいる。
清潔感のあるその容姿には、好感が持てた。
これは期待できそうだ。
せっかく必死の思いでこんな場所まで来てやったんだ。不味いものでも出たら承知しないぞ。
そう思い、ずかずかと中に入っていった。
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