老夫婦と食堂

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案内されたのは、陽が柔らかく差し込む窓際の席。 二人用らしい小さな丸い机には、真っ白なテーブルクロスが掛けられている。 机上には、陽の光を多方向に反射しているガラスの瓶が置かれ、クロスと同じく純白の、一輪の花が挿されていた。 ウエイターといい、内装といい、異質なほどに外観からはかけ離れている。 「綺麗な所でしょう?」 「ああ、まあな。お前はここに来たことがあるのか?」 そう訊ねたが、妻は何も言わず、窓の外をぼんやりと眺めだした。 やれやれ……。 「今日は記念日ということでしたので、特別にサービスさせていただきます。では、しばらくお待ちくださいませ」 ウエイターがそう言い、奥へと去っていった。 記念日とは一体何のことなのだろうか。 彼の言いようから察するに、俺たちの記念日なのだろう。 俺は何か、大切なことを忘れている気がする。
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