老夫婦と食堂

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妻はまだストローから得体の知れない液体を飲んでいる。 「美味しいじゃないですか」 「俺も不味いとは言ってないだろう」 口をゆすぐように水を飲んでいると、次の物が運ばれてきた。 「ごゆっくりどうぞ」 ウエイターは皿やスプーンを机に置き、頭を下げ、また奥へと消えた。 次こそは……。 彼の表現はそう見えなくもなかった。 置かれた皿には、御飯が盛られていて、中には枝豆や白子が入っている。 何なんだこれは。あまりにも期待はずれだ。それに、具は全てが潰れて小さくなっている。 しかもこれはただの御飯ではない。粥だ。何故粥なのか彼に聞いてやろうか。 とりあえずそれを、横に置かれたスプーンで掬い、口に運ぶ。 ――悪くない。 薄味なのは確かだが、懐かしいような、優しいような味がするのは、単に塩気を控えている為だけではないだろう。 隠し味でもあるのだろうか。 「ふふっ……」 妻がこちらをちらりと見て笑った。 俺はおかしな顔をしてしまっていたのかもしれない。 ばつが悪く、顔を無理やり作り直す。
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