10人が本棚に入れています
本棚に追加
妻はまだストローから得体の知れない液体を飲んでいる。
「美味しいじゃないですか」
「俺も不味いとは言ってないだろう」
口をゆすぐように水を飲んでいると、次の物が運ばれてきた。
「ごゆっくりどうぞ」
ウエイターは皿やスプーンを机に置き、頭を下げ、また奥へと消えた。
次こそは……。
彼の表現はそう見えなくもなかった。
置かれた皿には、御飯が盛られていて、中には枝豆や白子が入っている。
何なんだこれは。あまりにも期待はずれだ。それに、具は全てが潰れて小さくなっている。
しかもこれはただの御飯ではない。粥だ。何故粥なのか彼に聞いてやろうか。
とりあえずそれを、横に置かれたスプーンで掬い、口に運ぶ。
――悪くない。
薄味なのは確かだが、懐かしいような、優しいような味がするのは、単に塩気を控えている為だけではないだろう。
隠し味でもあるのだろうか。
「ふふっ……」
妻がこちらをちらりと見て笑った。
俺はおかしな顔をしてしまっていたのかもしれない。
ばつが悪く、顔を無理やり作り直す。
最初のコメントを投稿しよう!