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もうそこには、先程までの敵対関係はない。
恐怖というものは、人を一つにまとめ上げる。
だが恐怖は、人を追い詰め、闘いを余儀なくさせる。
彼女に一斉放火を浴びせようとしている。
両軍からそれが見て取れた。
兵士1人1人引き金を引きかける。
そして、戦車全ての照準が彼女の位置へと傾けられ…ドガドガドガンッ!!
戦車の数々は発射よりも早く、爆炎と共に宙を舞っていた。
その後、戦車は地面に叩きつけられ、爆風などで周りにいた軍人たちにも被害がでていた。
戦場は、一瞬で混乱に陥った。
ある者は一目散に物陰へ避難し、ある者は急な出来事についていけず、呆然と立ち尽くす。
それでも勇敢な戦士たちは銃口を彼女へ向け、発砲している。
そして、この混乱の状況に乗じて彼女は動き出す。
瓦礫の上を素早い足取りで駆け下り、銃弾は踊りの舞いのように軽やかに交わしていく。
そして手元の大鎌を身体を護るように回転させ、数秒で速さは音速に達する。
彼女の前では、人数など意味をなさない。
圧倒的な力の前に、軍隊は手も足も出ず。
彼女は容赦なく、敵の銃器を大鎌の斬撃で豆腐を斬るかのように解体し、動作に間をつくらず、蹴りや大鎌の柄で相手をぶん殴り、なぎ倒していく。
たった数分のうちに目の前の軍隊は全滅した。
先ほどの戦闘をみるからに兵士たちはなんとか生きているであろう。
これをしでかした張本人はというと安堵のため息とともに瓦礫に腰をかけていた。
「物足りないな…。」
黒煙が広がり、淀んだ灰色の雲空を見上げながら、彼女はまったく警戒していない様子で、フードへと手をかけ、それをとった。
私は気になっていたその彼女の素顔をみて私は、驚きのあまりに絶句してしまった。
彼女は私だったのだから…。
そして、夢は覚めようとしていた。
目の前の視界が突然ぼやけ始める。
そして、視界は徐々に闇へと落ちていく。
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