1998~序章~

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俺達は大黒埠頭へ走った。 風になる。 本当に風になるとは思っちゃいないし、 感じた事もないが、なんかカッコイイの でよく口にする言葉だ。 産業用道路の直線に出る。 この時間は車も少ないし、信号も少な い。 この道はとにかく長く重いっきり飛ばせ る。 「よっしゃ!風になるぜ!!」 俺はアクセルを目一杯開ける。 SRは悲鳴を上げグンッとスピードが上 がる。 ギリギリまでひっぱり、ギアを高速レン ジへ入れる。 回りの光りが後へ流れ出す。 ……気持ちいい。 この時は世界が変わった気さえする。 俺達が死んだら、あの世ってこうゆう世 界なんだろうか? それとも無になるのか? なにも感じない、そもそも考える事さえ できない。 無とはどういう事なのか? わからない。 その時、後ろを走ってたはずのタカシ が、バックミラーから消えた! 「えっ!?」 後ろを振り返る。 1番後ろを走っていたトシが止まってい た。 俺もSRを止め、トシの所へ走る。 「タ、タカシが!」 トシとキョウコは口をアングリと空けて いる。 「タカシはどうした?」 虚空を見ながらトシは言った。 「きっ消えた。まるで、別の世界に吸い 込まれるように。」 キョウコも言った。 「光の中へ吸い込まれていったわ。」 俺達はタカシがいたはずの場所を、ただ ただ見つめるばかりだった。
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