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「請弥兄さまは、毎朝その食事で飽きないの?」
突然、聖次に聞かれた。今まで誰もそんな事を聞こうとしなかった。でも、
「えっ?」
僕は気にされていないと思っていたけど、聞かれなかっただけで、疑問には思われていた様だった。
その証拠に、質問の後から祖父と母がこちらを見ていた。食事の手を止めて、聖次が答えを求めて呼び掛けてくる。
「請弥兄さま?」
「……っ…」
返事に詰まっていると、お茶を持ってきた音伽が、祖父、ぼく、聖次、母の順にお茶を出し困った様な顔をする。
「請弥様、聖次さま、お話しの所申し訳ありません」
聖次が、腹立たし気に音伽を睨み付ける様にみる。
「何ですか?音伽さん」
訊くと困った様な顔のまま、いつも身に付けている懐中時計を差し出しながら先を続けた。
「いつもより少々遅くなっておりますが、お時間はよろしいのでしょうか?」
ハッとして、時計を確認すると、針は7時35分を指していた。
「教えてくれてありがとうございます、音伽さん」
礼を言い残っていた食事を食べる。
この家では、余程の事がない限り、食事を残す事は許されていない。ちゃんとした理由がある場合を除いて。
ただし、どうしても食べれないものは、音伽に伝えておけば、最初から出されないので残す事はめったにない。
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