歪みの順番

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 大学を卒業後。  一年弱、民間企業に就職したが、心身共に崩壊し退職した。  そんな私を、父親は友達が経営している民宿へ連れて行った。広い海を眺めていると不思議と気持ちが落ち着いて来た。  ところが。  この民宿の主人が開口一番、初対面の私に向かってこう言った。 「早く息子の子供を産んでくれ!」  開いた口が塞がらないとは、この事を言うのだと私は思った。 「ちょうど就職にも失敗しとるし、子供を産むにはちょうどいい年だ。お宅の息子さんもいい年頃だから、実に都合がいい。」  高らかに笑うふたりの田舎者達に、私は怒りとも恥とも知れない黒い憤りを感じた。  その場を離れ、勝手口を通りかかると別れのキスを交わす恋人達を見かけた。  おそらく男の方が例の息子だろう。顔は見えなかったが、民宿の勝手口から出る姿だけを見た。
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