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結局、その日からずっと私が民宿の息子と話すどころか、顔を見る機会もないまま、この縁談は父親同士で進められた。
何を言っても無駄だった。
民宿の息子に恋人がいる事も話したが、父親は全く意に関する事はない。
「今のおまえを引き取ってくれるのは、あの民宿だけだ。」の一点張り。
母親も早く結婚した方が幸せになれると力説する。
私はあなたと違って妊娠していません、と何回も言いかけたし、兄の実の父親について暴露しようとしたが、確実な証拠がない。
唯一の証拠は、口いっぱいにお菓子を詰め込み、百三十キロの巨体を揺らしてはしゃぐ兄の姿だけ。
(これが幸せと言うのなら、私はどんな幸せも欲しいと思えない。)
大して好きでもない異性の友人に交際を申し込まれても、私は縁談を壊すためだけにそれを受け入れ、両親に彼を紹介した。
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