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それでも縁談は止まらなかった。
父親は早く孫の顔が見たいと毎日言い続け、母親も兄の世話に余念がない。
そんな中で、母親が遠い目をして、私に語った言葉が忘れられない。
「本当の愛はね、手に入らないからこそ、いつまでも美しいのよ。」
背筋がゾッとした。
あの醜い兄を残した母親の純愛と、私の交際を重ねられたからだ。
こちらは母親とは逆で、子供を産む機械にされたくなくて、男性と仕方なく交際しているだけだ。
(結局、私も母親と同じで、自分の都合を優先するために、好きでもない人と結婚しないといけないのか。)
交際を始めた彼と結婚式場の下見をしながら、私は自分に吐き気が止まらなかった。
次第に吐き気はエスカレートし、病院で検査を受けると十二指腸潰瘍だと診断を受けた。
内視鏡手術で潰瘍を取り除いても吐き気は止まらず、やがて立ち歩くだけで胃液を吐くようになった。
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