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そんな事分かっているはずなのに、これは恐らく寝ている私の夢で、母はもうこの世にはいない、それでも叫ばずには居られなかった。
その私をあざ笑うかのように今度は眼は、視界は小さい私と母の姿を奪っていくのだ。
(待って!待って!待って!!)
そして、全ての視界がブラックアウトした…。
「お母さんっ!!」
ばっと体を起こすと、先ほどとは別の光景が朝の日差しとともに視界に入りこんだ。
ぱっと、身を起こし見つめた先に鏡が見えた。ティナが化粧をする時によく使う奴である。
遠目に覗き込むと、そこには子供の頃の私は居なく、代わりに今年で20になろうとしている立派な娘の姿がそこに映っていた。
何にせかされるでもなく、せかせかと首をぐるりと動かし部屋を見渡す。
そこは紛うことなき、私、シズク=エトワールが暮らしている部屋、スピル国の北、ノース地方にあるノース訓練所の女子寮、同僚のティナ=アルヴァンと後輩のノエル=シープヤードと暮らすいつもの部屋だった。
「夢か…」
私はあまりのショックに右手で口元をふさいだ。
まさか…、まさか、今になってあの時の夢を見るとは思わなかった。
自分の中でも指折りで最悪の日の事を夢見るなんて、本当に心臓に悪い。今でもどこか動悸が酷い。
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