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相当、気に病んでいるのか、言葉の後にさらに顔の前で手を合わせる動作を付け加えた。
(ああ、やっちゃったな…)
別に彼女にこんなことをさせたくて言ったわけではない。自分自身の思考が不意に口に出てしまったのだ。
それだけに本当に申し訳にない。
自分の知らなかった事への自嘲のつもりがよくよく考えれば彼女を責める言葉になっていた事に少し焦る。
「ううん、気にしないで。私も話してなかったから…」
「亡くなってたのね…」
私はそれに一つコクリと頷き返し口を開いた。
「うん、病気でね。後で聞いたら随分と悪かったらしいから、仕方ないけどね…」
「そっか…」
すると彼女はさらに表情を暗くする。
彼女はこういう人間だ。いつもは意味なく明るい癖に、暗くなったらとことん暗くなってしまう。
それも人の事になると余計の事である。
だからそんな姿を見ると、こんな空気を作った自分がはたはた情けなくなる。
(駄目だな…、私、よし!)
私はそんな空気を潰すためにベッドから飛び出すと、近場のカーテンを思いっきり引き開けた。
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