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母の苦笑に私は頬を膨らませて腕を組む。
「もう、セツナったら帰ったら剣術の相手してって頼んできたくせに…」
「ふふ、お姉ちゃんは大変ね。じゃあ代わりにお母さんとお話しようか!お菓子も久しぶりに作ったしね」
徐にエプロンのポケットから銀紙に包んだマドレーヌを取り出したのを見て私は魔法に見せられたように目を見開いた。
「やった!」
私と母は家の奥にある縁側、庭が良く見える見晴らしのいいそこまで行くと床に腰を下ろし、お菓子を食べながら雑談を始めた。
とくにこれといって特別な事はない。普段の学校の話だとか、帰り道に見つけたおいしいお菓子屋の話だとか、お父さんのズボンに穴があいていて皆でおお笑いした話だとか。何処にでもあるような普通の話を二人で続けていた。
「そうだ!今日ね学校で珍しい言葉を習ったんだよ!」
ふと、今日の授業を思い出し私はそう言った。
「へぇ、どんなの?」
話題に出す位だからどんな話なのか気になったようで母も興味シンシンに私の顔を覗いた。
「花鳥風月」
「妖国の慣用句ね。随分難しい言葉を習うのねぇ。意味は分かるかしら?」
「えっと、確か世の中の美しいものの例えだって」
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