プロローグ 回想

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まるで試すように聞く母に私は得意げに答えを言う。 「そうよ、花も鳥も風も月も綺麗だから。そういう自然の美しさを慈しむ心から生まれた言葉よ」 「良い言葉だよね」 「ふふ、そうね。でもねお母さんはそれより好きな言葉があるの」 「何?」 私が首を傾げ聞き返すと母短く 「雪月華」 と言葉だけで答えた。 「せつげっか?」 「雪と月と華と書いて雪月華」 頭にその言葉の字を思い浮かべながら考えるがどういう意味なのか全くと言って浮かんでこなかった。 割かし自力で何でもしたがる私はちょっと悔しさを感じながらも観念して母に尋ねる事にした。 「意味は何なの?」 「花鳥風月と同じよ」 (同じ?) ということはつまりはそれも自然の美しさを例えた言葉だという事になる。だけど…。 「ええ、じゃあなんでそっちが好きなの?」 私が納得できずにそう聞くと母は嬉しそうに口を開く。 「だって雪月華には雪が入っているでしょう?お母さんはね雪が好きだからこっちの方が好きなのよ?」 「そっか、私も雪好き!」 (あっ!そうだ!) ふと思いついたように私は指を上に向けた。
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