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「そうだ、セツナとコユキにも教えてあげなきゃ!」
「無理に起こしたら駄目よ」
立ち上がり、二人のいる寝室に行こうとする私に母はそう言うとニコリと私に笑顔をくれた。
「はーい!」
廊下を走り出し、角を曲がろうとしたその時、
(そうだ!)
ある事を思い出し私は母の方に向きかえった。そして
「お母さん!」
「うん?」
「今日は一緒に寝ようね!」
と満面の笑顔でそう言う。
すると母も笑顔で
「そうね、今夜は寒いからね…」
と嬉しそうにそう言った。
それを確認した私は再び寝室へと向かって走り出した。
その後、起きた妹たちとともに私達思いっきり遊んだ。犬も呆れるくらいに庭を駆け回った。
そして猫に負けないほど暖かい場所、母の胸の中でその夜は眠った。
ふと今思う。
雪はなぜ白いのだろうか?
淡くほんのりとしたその白さは見ていてとても温かい。
その一方で雪は冷たい。まるで暖かくなり過ぎないように自分たちを冷やしてくれて居るような優しい冷たさを感じる。
だけどそんな雪は触れれば自分の温度で溶けてしまうほど柔く、儚い存在である。
いずれは消え、なくなってしまう。それははっきりと目で見て分かってしまうほど露骨だ。
だからこそ母も、そして私も雪が好き。
一瞬の美しさに心が満たされる感覚がたまらなく好きだ。
そんな雪みたいに、朝、母は私の横で冷たくなって亡くなっていた。
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