人間の飼い方

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「はい、終わり!」 ブラッシングを終えて、私は唯の隣に座る。 そして後ろからだと気付かなかったけど、唯が手に何か持ってるのが見えた。 雑誌みたいだけど。 ……まさか! 「ああっ! ちょ、それ見ちゃ駄目!」 慌てて私は雑誌をひったくる。 それは、この前お母さんが置いていった美術雑誌だった。 しかも開かれていたのは例の、私の特集のページ。 「……何で。大きく載ってるじゃん」 「だから嫌なの! だってこんな記事、馬鹿みたいじゃない」 天才だとか、神童だとか。 そんな言葉で飾った、必要以上に盛り上げようとする記事が私は大嫌い。 「ふーん……」 唯は私が握り締めてくしゃくしゃになった雑誌に一瞥を投げると、急に立ち上がって歩き出す。 「え、どこへ行くの?」 勝手知ったる様子で唯は部屋を抜けて行った。 向かう方向は……アトリエ? 何の用があるんだろう? 首を傾げながら、私は足を早めて唯の後を追いかけた。
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