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「嘘だろ……?」
あるべきモノが何もない。
年明けで賑わっているはずの町には、人も車も……
いや、それだけならばまだいい。それくらいであれば、偶然という一言でいくらでも片付けられる。
たまたま誰も居らず、何もなかったのだと。
しかしこれはなんだ。およそ生物の気配はどこにもなく、さっきまで晴天を覗かせていた空も、薄紫色の不気味な空間へと変貌を遂げている。
「なんだこれ……なんだこれなんだこれ! なんなんだよこれ!!」
俺は焦燥感に掻き立てられ、がむしゃらに走り出した。
だが、それは唐突に停止させられることになる。
「あっつ……!?」
右手に浮かぶ奇妙な紋様。
どこかで見たことがある。でもどこで……?
「さっきの夢!?」
そうだ。この紋様はさっきの夢の中ででてきた紋様だ。
俺がそれを確認した刹那――空を切り裂いて一人の男が舞い降りてきた。
それは紛れもなく、夢に出てきた――神!!
「貴様が――」
その先の言葉を聞き取ることは出来なかった。
何故なら……。
「おはよう、いい夢が見られたかしら?」
目の前には幼なじみがいる。
俺は叫んだ。
「夢かよ!」
まさかの二重の夢オチだった。
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【結】牡牛ヤマメ
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