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少年が、下ろしていた腕をゆっくりと挙げる。
この世界には重力がないのではないか。そう感じさせるほどに優美な動き。
手首や指先に力は入っておらず、それらはただ腕に垂れ下がっている。
海面と水平になったところで、腕がぴたりと止まる。
暫くの静寂――。風もない。
――その刹那――
これまでの動きが嘘のように、瞬時に手首や指先に力が込められる。
そして下を向いている掌からは、眩いほどの光が放たれ始めた。
純白と純黒。
混ざり合うことのない二色の光。
その白は海よりも清く、その黒は海底よりも無垢である。
少年は、さらに高く腕を挙げる。ゆっくりと。美しさを伴いながら。
そして少年は、一声を発する。
その声を耳にすることすら恐ろしいほど、厳かに。
「世界を、創造する――」
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【承】夜霧 碧
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