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少年は両手を天に掲げ、高らかに詠う。
『――我はいつも一人だ――』
それはきっと、少年の想いを綴った唄なのだろう。
『――果てぬ力の前に、皆が朽ちた――』
脳裏に浮かんでは消えていく、惨劇の舞台。
『――力など、要らなかったのに――』
吐き出された本音からは、怨念の色が隠しきれない。
『――ただ、抱きしめてくれる人が欲しかっただけなのに……
どうして離れていく――』
しかし、少年に与えてくれる者は、誰もいなかった。
『――寂しい…寂しい…寂しい…――』
頬に一筋の雫を這わせながら、少年の歌声は響き渡る。
『――ならば仲間を作ろう――』
純粋な愛は狂気へと変わり、少年の瞳にはいつしか闇が宿っていた。
『――我を裏切らぬ、精巧なる人形を――』
少年は一拍だけ置くと、自身を抱き締めるようにしながら、最後の章節を詠った。
『――踊れ、水兵の愚者共よ――』
最期に少年は何を想い、何を望んだのか。
それは彼にしかわからないだろう。
そして世界は創造される。
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【転】牡牛ヤマメ
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