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僕の提案にグリズモンは眉間にしわを寄せる。僕の真意を図りかねているかのようだ。
「ちょっ……」
「何言い出すんですー」
「正気ですか!」
当の本人達が何か言っているが気にはしない。聞く耳を持つ気はない。
「彼女達は人型じゃない、お前達と同じ獣型だ。……お前達が恨むべき対象は僕だけだろ?」
「なるほどな……」
人型を相手にしているには珍しく、僕の提案について考えてくれたようだ。どこか悪寒を覚える笑みを浮かべて再び口を開く。
「――やれ」
「なっ……」
僕が声を上げるより早く、控えていた村人達が飛び掛かる。まるでグリズモンの言わんとすることが分かっていたかのように。
「きゃっ……」
「がはっ……」
「うぅ、痛いですー」
その狙いは僕ではなく、プロットモン達。悲鳴を上げる余裕も与えられずに取り押さえられる。
「お前ら……何の真似だっ!?」
「ハッ、直立二足歩行を完成した人型がそんなことも分からないとはな」
憤る僕を嘲笑うかのようにグリズモンは皮肉る。冷笑を浮かべた後に口にした言葉は耳を塞ぎたくなるものだった。
「そいつらと私達が同じだと……笑わせるな! 貴様のような人型と平気で関われる屑共と一緒にするな。そこにいるのはただの裏切り者、獣型の恥だ。……いや、獣型と名乗ることすらもおこがましい存在だ!」
なんでそこまで言える。敵対する種族と関わったからって、今日この日まで同じ村で過ごしてきた同族をどうすればそんな風に言えるんだ。
「何なんだよ、お前ら……」
無意識に拳を強く握って、怒りで狂いそうな僕自身の心を抑えようと試みる。でも、正直限界だ。彼らのいう人型の残虐さとやらが内から溢れてくるようだ。だが、うかつに動いたらプロットモン達の身に何が起こるかわからない。現在のこの世界の状況からすればなかなか滑稽なものかもしれないが、そんなことをいちいち気にする余裕はない。
だが、焦燥から僕の額から汗が落ちたとき、予期せぬ乱入者が現れる。
「――大丈夫か! 同志よ」
蜥蜴が二本の足で立ったようなそいつは、背中に巨大な大剣を背負って玄関の前に仁王立ちしていた。その後ろには同じように二本の足で地に立つデジモン達の群れ。――間違いなく人型だ。でも、なんで?
「ディノヒューモン……人型が獣型の聖域に土足で入るな!」
「獣型ごときが聖域という言葉を使うとはな。……笑わせてくれる」
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