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「お前、殺されるとでも思ったのか?」
「……まあ」
そう問われてもなんだか毒気を抜かれたようにそんな風にしか返せなかった。冷静に観察すれば、彼らには殺意の片鱗も感じられない。
「私達は荒野で倒れていたあなたをたまたま見つけて、放っておけなかったので拾ってきただけです」
「本当に……?」
そう言われても疑わずにはいられない。先の事件で疑り深くなっているようだ。
「確かに人型と獣型は憎みあっているみたいだな。でも、例外がいるとは考えられないか? ――それが俺達だ」
例外……か。考えても見なかった。ソーサリモンと暮らす以前に記憶はほとんどなかったし、あまり外に出たこともなかった。記憶上ではじめて会った獣型がムースモンだったから固定概念を植えつけられたのだろう。……だとしたら、ソーサリモンも例外だろうな。
「じゃあ、そろそろ行くよ。ありがとう」
そう言って家を出ようとする僕の足を彼が掴んだ。
「待ちな。もう少しゆっくりしていけばいいだろ?」
「え?」
意外な提案だった。もともとこれ以上厄介になるつもりはなかったのだ。
「遠慮ならしなくていいわ。このままどっか行かれる方が気分悪いわよ」
「しかし……」
「行くところありますー?」
「ぐっ……」
だが、床掃除をしていた二人に遮られる。黄色いのに正論を言われて詰まるのは腹が立つが何もいえない。
「俺はロップモン。白いのがプロットモン、黄色いのがパタモンだ」
差し出された手に悪意は感じられなかった。どことなくソーサリモンと近しい雰囲気も感じた。
「……僕はルーチェモン。よろしく」
不本意ながらにその手を取った。ここからまた新たな生活が始まったようだ。
この家はほかの家から少し離れたところに建っていた。獣型デジモンのみがいるこの村では僕は異端の存在なので、あまり外には出られない。――例外はこの村でも例外だったようだ。
この村のデジモン達は当然のごとく人型にいい印象を持っていなかった。中には表では温厚だが、実は過激的な獣型もいるらしい。
だから、僕はロップモン達が出払っている間の家事を任された。彼らも自分の体を器用に使って家事をしていたらしいが、人型の僕の方が向いているようだ。……今日はデジカムルのムニエルでも作るかな。
「帰ってきたですー」
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