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「そう、あいつは『進化』したんだ。……ただ、その進化先がまずかった」
「まさか……」
予想はついた。だが、それはツカイモンとロップモン達に、最悪の相違点を与えてしまう。
「あいつが進化したのは、ピッドモン。二枚の羽を持つ天使型の――人型デジモンだ」
やはりそうだった。獣型の村で進化した人型デジモン。本人も彼らも衝撃的だっただろう。まさか、憎悪すべき相手に進化してしまうとは思わなかったはずだ。
……彼らはどうしたのだろう。憎悪すべき相手へと進化した友とどう接したのだろう。
「俺達も衝撃的だった。あの村で憎めと言われてきた相手に進化した友をどうすればいいのかと。……さんざん悩んだ結果決めた。自分の本心に従おうと。――進化しようと彼は彼。それは変わらないのだから、態度を変える必要はないと」
だろうと思った。だから僕は彼らとともにいるのだ。では、事件とは何なのか。
「ただ、俺達は考えが甘かった。あいつを他の村人に紹介してしまったんだ。彼らならきっと受け入れてくれると、そう思っていたんだ」
「でも、そうはいかなかった」
「ええ。あいつらはそのときは穏便に受け入れたふりをしてたが、ピッドモンが一人になったときに彼を襲ったんだ。結局、成熟期に進化したしたばかりの彼は多勢に無勢で何もできずにそのままデリートされてしまった。不審に思った俺が彼を探しに行ったときには彼が粒子となり再生不可能となってたよ」
「そうだったのか…」
それ以上、僕は何も言えなかった。その村では人型は憎悪の対象。たとえもともと村民だったとしても、彼らにとって人型は排斥すべき存在だった。彼らにとってはそれが正義だった。
きっと人型もただ残酷な種族ではないはずだ。少なくとも、人型だったソーサリモンはそうだった。無愛想だったけど、いつも僕の味方でいてくれた。ピッドモンだって元々彼らの仲間なのだから、きっと……。
その村の獣型デジモン達もそれが分かっていたら、そんな風に思えていたら、彼を殺めずに済んだだろうに。
「それから俺達はその村から逃げ出した。人型とともにいましたから、命が保障されるとは思えなかったからな。……でも俺達はそんな風には思いたくなかった。――進化したらその瞬間から敵になるなんて悲しすぎるだろ」
「その通り、だな……」
世界中のデジモン達がそう思えたら、このいがみ合った世界も変わるのかな。
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