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この火傷は最近の傷じゃない。 ずっと前の、俺が2歳の頃の話らしい。 俺の両親は俺が生まれてすぐに離婚して、俺は母さんに引き取られた。 だから俺は父さんの顔を知らない。 俺が2歳になった頃、俺は昼寝をしていて、母さんは俺が寝ていたから そのままにして、買い物に出かけたらしい。 すぐに戻ってくるつもりだったらしいが、これは完全に母さんの過失だった。 俺たちの部屋は、アパートの1階。 狙われやすい部屋だったのは確かだが、母さんは気がゆるんでいたんだ。 俺たちの部屋は昼になると木の陰ですこし暗がりになり、 よく考えてみれば、死角になるような感じだったらしい。 それに昼間はアパートの住民は仕事に出かけていて、隣の部屋にも同じ階にも 人がいることがほとんどなかったのだという。 だから、多少の物音がしても誰かに気づかれることがなかったのだろう。 放火犯は窓を割って、そこから侵入し、タンスなどを探り、金銭関係を盗むと、 そのまま出て行かず、わざわざ部屋に火をつけて逃亡した。 俺に気づいて火をつけたんだ。
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