豆がないならチョコをまけば良いじゃない

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「のう、金や」 「なあに」 疲弊しきった表情でホイップクリームを作っている青年は小さな画面の女性に問いかける 「これ、わしが食べるんかのう」 「勿論よ」 *** 二月十四日 ある人は「愛を語らう日」と呼び ある人は「感謝を伝える日」だと言い またある人は「お菓子メーカーの笑いがとまらなくなる日」だと語る テレビでは朝から晩までチョコ尽くし ブラウン管の向こうから甘いにおいが漂ってきそうだ。 そんな賑やかな日の午後 ある喫茶店に一台の小型テレビが届いた 送り主不明 注文者不明 しかし宛先だけは間違っていない 以前の住人…と考えるのは少し、否、とても無理がある 既に料金は支払ってあるのであとあと請求が来ることはないと言われたが 「開けて爆発なんぞしたら嫌じゃのう」 そもそも自分の物ではないと分かっているのに開封するのは気がひける 同居人が帰ったら開けようと箱を持ち上げた時、コンセントもつけていないテレビから声が聞こえた 「ちょっと、開けて!!開けて!!ヘルプ!!ヘルプ!!」 *** 「というわけなのよ」 小さな画面いっぱい使ってぷりぷりとご機嫌ななめをアピールする金髪の女性 小型テレビなので細部は潰れてしまっているがこんな芸当が出来る女性は彼が知る限り極々少数しかいない。 「つまり、例のウイルス退治とやらのワクチンが出来たがそれを使うと自分の、プログラム?も破損するので、クリーニング…?…が終わるまでこのテレビで厄介になりたい…と。そういうことじゃな?」 「ええ、まさしくその通りよ。私自身クルコ先生に用事もあったし、鈴々達は一時帰郷してるし…邪魔じゃなかったら置いてくれると嬉しいわ。」 顎に指をそえ、首を傾げる姿はとてもプログラムでつくりだしたようには見えない程人間らしい 「まあ、この位の大きさじゃったら邪魔にはならんが…これ、うつるのか、番組」 「ありがとう、助かるわ。テレビは私が出ていったらうつるようになるわ。このテレビ、容量が小さいから今は無理だけど。」 「つまりお主が重い、と?」 「重くないわよ」 むきぃ!!と歯を剥き出しにして怒っていたが、はたと思い出した様子で両手を叩き、画面を縦に二分割にして、自分の隣に甘ったるそうなケーキのレシピを引っ張り出した。 「私がいかに軽量型なのかは後で説明するとして…、今回は用事を優先させましょう。ねえ、ケーキはお好き?」 ***
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