ただいま。

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「魔王を討伐し世界を救った勇者…ナナイ殿だぁあああ!」 俺は舞台の袖から埋め尽くさんばかりの群衆を見つめて固まっていた。 「マスター!いい加減に舞台に上がって下さい!」 「ふぇ…無理だよ~。こんなに沢山の人の前で喋れないよ~。」 「隊長はあの魔王を倒したんですから!皆にその勇姿を見せつけてやってください!」 「いやぁ!兵士A!そんなグイグイ押さないでぇ!!」 兵士Aが誇らしげに俺の背中を押してくる。 …あの魔王を倒した… その事実だけが世界を駆け巡った。 悪魔の襲来は混乱が起きないように内密にされていた。 しかし、…あの魔王を倒した…それは長年ダンジョンに怯えてきた民衆にとっては久々の朗報だった。 全ての戦いが終わり、魔王城より帰還した俺を待っていたのはギニュー王国をあげてのお祭り騒ぎだった。 その騒ぎを収めるため主役として一言、挨拶する羽目になった訳なんだけど… 「あっはっはっは!ほら、群衆が魔王を倒した勇者の一言を待ってるよ~。」 キムチャが固まる俺の肩をニヤニヤしながら叩く。  「ナナイ!」「ナナイ!」「勇者!」 群衆からの割れんばかりのコール。 「でも俺、勇者違う。むしろ大魔王なんですけど!」 「全く…以前から全く成長しませんわ!…うじうじ…さっさと行ってきなさいですわ!」 「んぎもっぢぃいいい!」 そして俺はカグラに舞台へ蹴り入れられる。 恍惚の叫びと表情を民衆に晒してしまった。 「ナナイ!」「ナナイ!」「ナナイ!」 それでも変わらず、俺の事を叫び続ける群衆。 恥ずかしさのあまり顔を赤くして震える。 なにこの羞恥プレイ?イジメかよ! …なんて最初は思っていたさ… でも、不思議。 恥ずかしさを通り過ぎて段々、気分が良くなってくる。 手を振ると、それにあわせて声援が大きくなる。 何これ…超気持ちいい! こ、これは民衆の期待に応えて何かしないといけない。 民衆は何を望んでいる? きっと勇者である俺の事をもっと見たいはずだ… だから、脱いだ。 「…っんぎもっぢぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「午後15時25分。猥褻物陳列罪及び国家侮辱罪で逮捕します。」 逮捕されました。
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