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「なになに、どうしたの?桐也さんと喧嘩でもしたの?」
3週間ぶりに会った圭は相変わらず私の話をそっちのけで、まずは腹ごしらえとメニューとにらめっこを始める。
そして、空腹をある程度満たした圭は徐に質問を飛ばした。
「喧嘩じゃない。別れる。」
「は?何それどうしたの?突然思い立ったの?」
圭には予想外の言葉だったようで、明らかに驚いた顔で食べる手さえ止めて私を見つめた。
「最初から上手くいかないとは思っていたから、当然の結果だけど。」
「何で?結婚するって報告でもされるかと思っていたのに!」
「そんな訳ないじゃん、應治のせいでなった男性不信を治す為に付き合ったようなものだし。」
「いやいや、未練があったから正式に付き合い直したんでしょ。」
圭は妙なツッコミを入れながらも背もたれに深くもたれ掛かって恨めしそうな顔で私を見た。
「何よ?」
圭はわざとらしく溜め息を吐きながらグラスをゆらゆらと動かす。
「いやー、具体的な理由は何?何となくとかじゃないでしょ?」
「他にも女がいた。」
「え、女?浮気してたって事?」
「さあ、どれが本命か知らない。」
私の厭味ったらしい言葉を物ともせず、圭は慌てて上半身を前のめりにする。
「浮気してたって…咲楽ちゃんの思い込みじゃなくて?咲楽ちゃんって結構思い込みが激しいし。ちゃんと確かめたの?証拠掴んだの?」
機関銃のように捲し立てる圭を制止して店員を呼びお代わりの熱燗を頼む。圭は固唾を呑んで私の次の言葉を待っている。
「…証拠を見せて確かめた。」
「証拠って何?確かめたって浮気しているのって聞いたの?」
「そう、写真を見せてヤッたか聞いた。」
「なによ、写真って!」
圭は興奮して立ち上がろうとして、テーブルに膝をぶつけて叫び声を上げる。
「落ち着きなさいよ、お酒が溢れるでしょ。」
「そういう問題?!で?写真って?証拠写真を撮ったの?尾行したの?どんな証拠なの?」
圭は立て続けに質問を飛ばし、私は辟易して店員の持ってきた熱燗をお猪口に注いで飲み干した。
「飲んでる場合じゃないし!」
「送られてきた。」
「え?写真が?誰から?どんな写真なの?」
「應治が女とホテルに入って行って出てくる写真。」
「誰から送られてきたの?知り合い?」
「知らない。」
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