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「知らないって!でも、その写真を桐也さんにも見せたのね?それで肯定されたって事?」
「そういう事。」
「ちょっと!その写真見せてよ!」
予想通り絶叫した圭は私の肩を掴んで前後に揺すった。慌ててお猪口をテーブルに置いたけれど、少し中身がこぼれてしまった。
「ちょっと!そんなことしなくても見せるし!」
勿体ない、と文句を言った私によく分からない言葉で悪態を吐いた圭は身を乗り出して私の一挙一動を見守る。
私が画像を開いて圭に差し出すとひったくるようにして携帯電話を受け取った圭はジッと画像を見つめた。
「確かに桐也さんだ。」
「そう言ってるじゃない、しかも本人も認めているんだし。」
「でもさ、自分の目で確かめないと。それにしても誰が送って来たんだろう。何か心当たりないの?」
圭は未だに画像にかぶりつきながら私に尋ねる。
「まあ、あるっていえばある。でもそんな事どうでも良くない?應治は認めてるんだから、誰が撮ったとしても関係ないでしょ。」
「まあ、そうなんだけど。でもさ、これっていつ撮ったんだろうね。桐也さんを張ってたのかな?だとしたらかなり大がかりじゃない?これって盗撮っぽいけど、相手の女が誰かに撮らせたのかもよ。だって、こんな事してメリットあるのって相手の女だけでしょ?」
興奮して語り続ける圭は異様だが、でも成る程と思う部分もある。確かにこれを私に送り付けて應治と別れたらあおいの思う壺だろう。彌生ちゃんが送って来たと考えるよりは信憑性がある。
「でも、盛り上がっているところ悪いけど應治が認めたって事実は変わらないし。」
「でもさあ、これってどこの写真だろ?」
結果は変わらないというのに圭は気になって仕方がないようでブツブツ呟いている。
「何かちょっと桐也さんの髪型が違う気もする。」
「気にし過ぎじゃない?」
「最近の写真なのかな?」
「先週末でしょ。ファイル名見れば分かるし。」
私は圭の問いに答えるのが億劫になり、熱燗を立て続けに呷る。私にとってはもうそんな事どうでも良い事だ。
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