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ボソリと呟いた私に圭は大きな溜息を吐いた。
「まあ、勝手に決めないで話し合わなきゃ駄目だよ。付き合っているんだから2人で決めなきゃ。」
「…」
諭すように言われて、肯定も否定も出来ず黙り込む私に圭が熱燗の徳利と持ち上げた。
「さあ飲んで飲んで。」
「ありがと。」
「湿気た顔してないで、折角だから飲もう。」
圭のおどけた声に私は頷いてお猪口を差し出した。
「それにしても咲楽ちゃんが恋愛でこんな風に落ち込んでいるのって初めて見たよ。」
「私だって人間だから。」
「何か笑える。」
圭はくすくす笑いながら自分のお猪口にも注ぐ。
「人間の咲楽ちゃんに乾杯。」
「うっさい。」
圭に報告したところで問題が解決する訳ではなかったけれど胸のつかえが下りた事で私はメニューを手に取った。
「何か飲むの?だったらこっちのメニューだよ。」
圭が差し出したドリンクメニューを制して私はフォードメニューを開いた。
「喋ったらお腹が減った。」
「うそー!あんだけ食べたのに?まだ食べるの?」
圭が唖然とした顔で私の顔と腹を交互に見る。
「痩せの大食い…」
「何とでも言え。」
私は圭のぼやきにも耳を貸さずメニューに意識を集中した。
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