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二人して、森の中で一息つく。
切り株なんて良い物が都合よくあるはずもなく、昨日の雨で泥濘んだ地面に腰を下ろした。尻が濡れて気持ち悪いが、ひんやりとした感触が、逆に体の火照りを冷ました。
戦の最中だ。
尤も、すでに終わりかけなのだが。
俺たちの負けだ。味方は敵に囲まれ、傍にいるのは、明智光安だけ。俺の義兄にあたる家臣だ。
他のこの戦場にいる者共が、俺を助けに来られる可能性は極めて低い。なぜなら、敵に幾重にもわたる包囲を受けているからだ。
これは俺の得意とする戦い方だった。大人数を以て敵を囲み、じわりじわりと攻め、力尽きたところを討ち取る。これをして負けたことは一度もない。
だからこそ解る。味方は、殺される。――
「大殿、ここに敵が来るのも時間の問題かと思われます。某がここで敵を引きつけますので……」
「光安」
言葉を遮る。その先は言われるまでもない。
「ここで落ち延びたところで何になる。城に義龍と渡り合えるだけの力は無い」
光安の顔が悔しげに歪んだ。元々、兵力差のある戦だ。仮に籠城したり、味方全てを結集させても敵わないことが解っているのだろう。
「それでは、某もここで大殿とともに果てましょう」
「いや、お主には頼みがある」
一瞬きょとんとしたが、すぐに真剣な顔になり「なんなりと」と言ってくれる。頼もしいことだ。
「実は十兵衛のことだ」
明智十兵衛光秀。幼少の頃から、俺が手塩にかけて育て、俺の全てを注いだ。
あいつなら、俺の遺志を継いでくれるだろう。美濃一国だけでなく、天下統一という俺の夢を。
「十兵衛を生かしてくれ」
「必ずや」
理由を聞くこともなく、光安は了承してくれた。
本当に良い家臣だと思う。自らの妹が、主君から家臣であった俺に奪われたというにも関わらず、俺についてきてくれた。
光安なら、頑固な十兵衛を説得し、逃がしてくれるだろう。
「頼む」
光安は走り去った。
「ふぅ……」
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