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自宅へと帰る車の中で、彼女の関心は実際に幽霊が居たのかどうかといった内容のものばかりだった。
それに対して僕は口を閉ざしたままだったけど、彼女の好奇心はおさまるところを知らず、「幽霊は居なかった」とだけ伝えるにとどまる。
彼女を自宅まで送り届け、自分の部屋へと戻った僕は、シャッターをきった覚えの無い、デジカメの画面を開く。
何も、写っている筈はなかった。
シャッターを押す余裕など、微塵も無かったのだから。
それでも――
画面には夥しい数の、歪んだ顔が映っていたんだ。
僕は全ての画像を消去する。
そして――
ポケットにバレないようにと忍ばせていた、手首から上だけのそれを、木箱に納めベッドの下に滑り込ませた。
またひとつ、証拠を手に入れた。
それだけで、僕は満足だった。
翌日、朝早くに家を出た彼女は交通事故に巻き込まれてしまい、不幸にも右手の手首から上だけが潰されてしまう。
僕は、あの体験した事実を彼女に伝えなければならない。だけど、まだそれが出来ないでいる。
―完―
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