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「じゃあさ、その噂が本当かどうか確かめに行こうぜ」
「えっ……ヤダ、よ……」
何故あの時あんな事を言ったのか分からない。
ただ、彼女が僕の言葉よりも友人の言葉を信じてる。
そう思った時、僕はそれを許せなかったのかも知れない。
なにかしら嫉妬に似た感情が、僕を動かしていた。
それに、僕自身が単なる噂に過ぎないんだと、確証を得たかったんだと思う。
やがてそれは好奇心となり、次の休日には嫌がる彼女を連れ車を走らせていた。
――車を走らせる事、一時間と三十分。
周りを針葉樹で囲まれた山の中腹に、それは在った。
民家の灯りらしい灯りはひとつも無く、其処に至るまでの寂れた舗装道路にも、外灯のひとつとして確認出来ない。
周りは闇、その闇の中にある空との境界に、建物のシルエットだけが浮かんでいた。
懐中電灯とデジタルカメラだけを手に、車を降りた僕は助手席の彼女に声を掛ける。
「嫌なら此処で待ってなよ。直ぐに戻ってくるからさ」
「そんなのヤダ。こんなとこに一人残される私の身にもなってよ」
「じゃあ一緒に行こうぜ」
「ホントに、直ぐ戻るって約束してくれる?」
「近くで写真だけ撮ったら直ぐに戻るって。約束するよ」
「だったら、ついてく……」
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