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車のエンジンをかけたまま、そのヘッドライトで施設の入り口を照らし、僕達は入り口と思われるゲートらしき場所へと向かう。
広い駐車場には雑草がアスファルトを割り、ところどころ顔を覗かせていたが、管理する者が居ないのか伸び放題といったところだ。
施設の外周はコンパネ(建築資財などに使用されている板製のパネル)で覆われており、その上から有刺鉄線が巻かれていた。
錆びた鉄柵で出来たゲートもまた、同じように有刺鉄線が巻かれている。
その鉄柵の隙間に懐中電灯を向け、施設の様子を窺ってみた。
懐中電灯の明かりが弱い為か、灰色の外壁が見えるだけで全体を確認する事は出来ない。
「もう帰ろうよ……」
「まだだって。ってか、中に入れるとこないか探してみようぜ」
彼女の手をひき外周を歩いていると、壁の内側から物音が聞こえてくる。
カツン――
カツン……カツン――
「ひいっ!」と身を屈める彼女の腕は、震えていた。
それを感じながらも、僕の向けた懐中電灯の先に、人がどうにかやっと通れるだけの穴を確認する。
中に入れる――
その時の僕は、恐怖心よりも好奇心にとり憑れていたんだと思う。
気が付けば彼女の手を放し、その穴を潜っていた。
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