18人が本棚に入れています
本棚に追加
肝試しだとか、その噂を確かめに来た人達だとか、きっと今の僕と同じようにこの穴を潜った筈だ。
そう思いながら地面を這っていると、茶色く変色した紙葛が目に止まる。
(なんだろ……?)
同じような紙葛が幾つも落ちており、僕はその内のひとつを手にとると懐中電灯で照らしてみた。
何やら消えかかった朱色の文字が読み取れたが、どうやらお札なのだろうと理解する。
そして身震いをひとつ。
(きっと、お祓いでもしたんだろうな……)
その時、徐に僕の足を掴む者がいた。
「おいてくなんて酷いよ!」
ひとり残された彼女が、慌てて僕を追いかけてきたんだろう。
少しだけホッとしたのは、紙葛を手にした時の、全身の血が引いていく感覚の為であり、僕に不安が生まれた瞬間だった。
「ゴメン、そんなつもりじゃなかったんだけどさ」
「分かったから、次は置いてかないでよ」
「あぁ、勿論さ」
敷地の中に足を踏み入れてからも、さっきの物音は続いていた。
僕達はその音の鳴る方角へと足を向ける。
その道中、建物に灯りを向けてみれば窓という窓の硝子は割れており、その外壁も黒い苔だか汚れだかで黒ずんでいた。
最初のコメントを投稿しよう!