疑惑

2/8
90人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
「お父さん。お母さん。私、本当にこの家の子供なの?」  思い詰めた表情で、ルミ子の娘フジ子は両親に言った。 「当たり前じゃないか。フジ子はお父さんとお母さんの娘だよ。」  父親の冨士雄は笑顔で答えた。 (大学生との浮気でできた子、なんて言っていた癖に。)  ルミ子は内心ムッとしながら冨士雄を睨んだ。 「私が本当の子供じゃないから、お母さんは私を叱るし、お父さんは知らんぷりしているんじゃないの?」  フジ子の鋭い指摘に、ルミ子は一瞬だけ背筋が寒くなった。体は弱いが勘が鋭く頭のいいフジ子なら、全てを見抜かれてもおかしくないからだ。 「違うわ。本当にフジ子は、お父さんとお母さんの娘なのよ。」  だからこそ、父親である冨士雄への怒りと憎しみを、この娘に全部ぶつけてしまう。  そう言いたい衝動をルミ子は堪えた。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!