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出会い
鬱蒼とした森の中で、男は心底面倒くさそうに嘆息した。上から下まで道服を着崩し、所々に木の葉をくっつけたまま、髪をガリガリとかきむしる。その足下には小さな体が横たわっていた。
「……まったく、うるせぇな」
しばらくそうして頭を掻いていたが、やがて嘆息し呟く。足下でぴくりとも動かない小さな体に向けての文句であった。
「【声】が聞こえたと思ってきてみりゃ……なんだ、まだガキじゃねぇか」
小さな体は道姑の服を纏った、まだ幼い少女である。しかしどのような運命の皮肉が見舞ったのか、すでに彼女は事切れて、物言わぬ存在となり果てていた。
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