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一見すれば、男が少女を害したようにも見える光景であるが、どうやらそうではないらしい。男は心底面倒くさそうに髪をかきむしり、その場に膝を折った。
そして、その出で立ちからは似ても似つかないような丁寧な仕草で、少女の衣服を整え始める。
整えながら、ぼそぼそと毒づいた。
「ったく、何でこんな所でお亡くなりになりやがるかね。【声】なんて聞かなきゃよかったぜ」
『そんなのこっちが聞きたいのよー!!』
膝を折った男のぼやきに、空気をふるわせることなく叫び声が返る。甲高い、幼い子供特有の舌足らずな声だ。そう、ちょうど物言わず男に衣服を整えられるままになっている少女にもししゃべる力があれば、このような声に違いないと思われるような。
しかし男は驚きもせず、衣服を整え続けながらふふんと鼻を鳴らした。
「ああ、やっぱりまだここにいやがったのか。まあそりゃそうだろうなぁ」
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