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完全に他人事の言い方だが、男には、声の主の正体が分かっているらしい。しかもそれが、今自分の足下にいる少女であると思っているのであった。男の反応に、少女の声はきい、と小さく癇癪を起こすと、さらに大きな声……といっても、その声は空気をふるわせるようなものではないのだが……で叫ぶ。
『なんでそんな反応薄いの! ていうかここはどこなの! あたしは誰なのー!!』
「はあ!?」
叫んだ少女に、初めて男は手を止め、素っ頓狂な声を上げて聞き返した。
「なんだそりゃ! てめぇが誰かだ!? んなもん知るかよ! つか何で自分でわかんねぇんだよ!」
『知らないものはしーらーなーいーのー! ここはどこ! あたしは誰! おとーさんとおかーさんは! おじさんは誰! なにがどーなってんの!』
「おじさんいうなー!」
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